片づけヘルパー 永井美穂さん
永井さんと関代表との出会いは十数年前
関 永井さんの現在のお仕事内容を教えてください。
永井 片づけヘルパーとして高齢者や介護が必要な方のお宅にうかがい、一緒に片づけをする現場と、講演や地域のセミナー、各種講座の講師業を半々くらいの割合で仕事をしています。
関 整理収納アドバイザーの仕事を始めた当初は、よく片づけの現場をご一緒していましたね。
永井 もう10年以上前になりますね。以前は整理収納アドバイザー2級認定講座を二人で開催したこともあって、私たちで0歳から100歳まで対応できますというのが売りでした(笑)。 関 そうでしたね。子どもの事例は私、高齢者の事例は永井さんが紹介できたので、いいコンビネーションだったのではないでしょうか。
永井 実は関さんは、私が整理収納アドバイザーになってから出来た最初のお友達。片づけのことは右も左もわからない状態でこの世界に飛び込んだので、先輩方の熱量に圧倒されちゃって……。 関 勉強会の後に少し熱を冷ますために、永井さんと一緒にお茶をしてから帰ったこと、私もよく覚えています。
近所の子どもたちで
わけるくんをやってない子は
いないんじゃないかな?
関 永井さんにはわけるくんが誕生してすぐに使い始めていただきました。現在の活用法を聞かせてください。
永井 地域イベントや地元のカフェで使っています。特に親子で参加できる催しを依頼された時は、「わけるくん」が大活躍します。近所の子どもたちでわけるくんをやってない子はいないんじゃないかというほど、わが町には浸透してるんですよ。
公共機関からの依頼で、全24コマの授業を片づけと介護で実施するという依頼もあって、その際には45分×2コマで「わけるくん」を取り入れました。
関 その授業では、どのように使いましたか?
永井 「自分を知る」ツールとしての使い方です。特に受講生が多い時は特に、一人一人に対峙する時間はないので、とにかく自由にわけてもらい、終わった人から周りを見てもらいます。そうすることで、自分とは違うわけ方、考え方があることに気づいてもらえます。
関 わけるくんは診断ではなく、気づきのツールだと日ごろからお伝えしているので、そういう使い方、とても理想的で嬉しいです。大勢で使うと、違う気づきが生まれますよね。
永井 「片づけセミナー」とタイトルがついているからか、受講生さんは初めはきれいにわけなきゃいけないと思っちゃう方、結構多いんですよね。でも中には色板カードを使って自由に描き出す人もいるじゃないですか。そういうわけ方を見て「素敵~!」って驚く方も多くて……。受講生同士で気づきが得られるのっていいなと思っています。
関 特に片づけに苦手意識がある方は、最初は「ちゃんとしなきゃ」という意識が働いて、本来の自分のわけ方が出来ない方もいらっしゃいますね。わけるくんを複数回繰り返していただく理由もまさにそこなんです。
これで何がわかるんですか? と聞かれたら……。
永井 いざわけるくんを目の前にすると、手が止まってしまって動かせないという人もいますよね。年配の男性からはわける前に「俺の何が知りたいんだ」と言われたこともありました。
関 自分を見せたくないという方、いらっしゃいますね。やりたくない方は無理にしなくていいと思います。それ自体がその人の現状を表していると捉えてもいいのでは……。 「これで何がわかるんですか?」と聞かれたら、永井さんはどう答えていますか? 永井 私は「これで良し悪しを決めるんじゃなくて、どういうわけ方が心地よいかを知りたいんです」とお答えします。「みんな、違っていいんですよ」と伝えるようにしていますが、どうですか?
関 すばらしいです。「これで何がわかるんですか?」と聞かれることも多いので、「正解はないので、安心してわけてみてください」という声掛けを先にすることは必要ですね。
高齢者にはいる・いらないの前に 分類が必要です
関 永井さんが「わける」を意識するのはどんな時でしょう。
永井 私はそもそも分類がとても好きです。分類すると分量がわかりますよね。何事も全貌が知りたいタイプなのかもしれません(笑)。
関 分類って片づけの基本ですよね。 永井 はい。私が伺う高齢者のお宅では、特に分類が大事です。というのも、高齢者は一つひとつのモノと向き合いながら、「いる・いらない」をチェックしている時間はないんです。だから先に分類をしてからチェックをはじめます。
関 永井さんは、専門分野を活かして「介護環境整理アドバイザー」の講座も開催されていますね。分類が大切だということは、この講座でもお話されているのですか? 永井 そうですね。モノが混在している高齢者宅の片づけをする上では、「わける」というスキルがやはり重要です。わければ片づくということをイメージできる人は案外少ないので、しっかりお伝えしていきたいと思っています。
関 では最後に、永井さんがこれから力を入れて取り組んでいきたいことを教えてください。
永井 例えば、これまでは高齢者のお宅に行って「久しぶり!」とハグすれば、それだけで片づけが進むという事実がありました。でもコロナ禍で今まで出来ていたことが出来ない状況は続いています。そこで、今、新しいコミュニケーション方法にトライしているんです。それは元々好きだったイラストの力を使って、メッセージすること。例えば「部屋の中は安全第一」「水分補給はマメにしましょう」そういう大切なこともイラストだと伝わりやすかったりします。肩に力を入れすぎず、地道に発信を続けていきたいと思っています。
関 わけるくんでわけているシーンもイラストで描いていただいていますね。ありがとうございます。これからも、わけるくんを通じてさまざまな気づきを共有していきましょう。
<プロフィール>
永井 美穂(ながい みほ)
介護福祉士の資格取得後、10年間介護事務所に勤務し、お年寄りの在宅介護に従事する。高齢者が在宅で安心して暮らせる部屋づくりを考えるなかで、整理収納アドバイザーの資格を取得。個人宅での訪問整理業務を行うほか、「介護者の気持ちがわかる整理の講師」としてもさまざまな業界で活躍。著書に「日本初の片づけヘルパーが教える 親の健康を守る実家の片づけ方」(大和書房/2019)がある。2020年より「介護環境整理アドバイザー」認定講師として介護における環境整備の必要性を広く伝えている。
片づけヘルパー 永井美穂オフィシャルサイト シニア・高齢者のためのゆっくりお片付け
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